絵を描くことだけに没頭した高校生活。
そして晴れて美大生に。
武蔵野美術大学(視覚伝達デザイン学科)に入学した私は、
意外にも美術やアートとは違う世界を持ちたいと思っていました。
そこで始めたのが、障害のある子どもたちが放課後に集まる施設のボランティアでした。
小学生くらいの年齢の子が集まり、一緒に遊んで過ごします。
遠足に行ったりもしました。
その中で、子どもというキーワードが私の中で確実に大きくなりはじめました。
それは、大学3年生のときでした。
子どもとアートをつなげたいと思っていた私に、ぴったりの授業がありました。
大学周辺に住む子どもたちを対象にした造形ワークショップをするという授業です。
自分たちが一から企画し、2日間の造形ワークショップを行いました。
そこには、今までに体験したことのないようなワクワクがありました。
何より、子どもたちの笑顔や一生懸命で真剣なまなざしが印象的でした。
私たちが投げたボールが、どんな形で帰ってくるのか予測不可能な面白さがありました。
面白いアイディア、洗練されたデザインを追及していくよりも、
相手がいて直接反応が返ってくる方が圧倒的に面白い、そう感じた私はどんどん造形ワークショップにのめり込んでいきました。
結局、3年生で2回、4年生の卒業制作でも造形ワークショップを主催しました。
知り合いの教授がおこなっている、療育施設の造形コースのお手伝いや、学童クラブでアルバイトもしていました。
私の大学生活の後半のテーマは、子どもとアートだったと言っても過言ではありません。
そして、子どもたちが、仲間と遊び、真剣にものづくりに取り組む姿をずっと見続けてきて、確信したことがあります。
それは、造形活動は心のお掃除だということ。
自分の心の中にある、楽しい気持ちも、苦しい気持ちも、悲しい気持ちも、全部吐き出すための手段。
子どもだって、たくさんのストレスを抱えて生きています。
それを外に出すための手段のひとつが造形活動です。
あなたはストレスがたまってるな、と思ったら何をしますか?
お酒を飲んだり、
カラオケで大声で歌ったり、
甘いものをたくさん食べたり、
衝動買いをしたり、
しますよね?
子どももストレスを外に出さなければ、心がパンクしてしまいます。
療育施設での子どもたちは、本当に生き生きと制作をします。
小学校生活の中で、できなくてもどかしいことをたくさん経験している彼らは、
何かを吐き出すかのように、制作に取り組みます。
私はそんな子どもたちをみて、気持ちよさそうだと思います。
絵の具で絵を描いたり、紙を切ったり、時には全身絵の具まみれになって遊ぶ子どもたち。
楽しそうというか、気持ちよさそうという言葉がしっくりきます。
だから、子どもたちにとって、造形活動は心をすっとお掃除してくれるもの。
常に、競争や比較の世界にさらされる子どもたち。
それによって、嬉しい気持ちも、悔しい気持ちも経験できます。
だから、それが悪いわけではないんです。
でも、競争や比較のない世界は、子どもたちがのびのびと育つために必要な世界。
今の時代、あえてその世界を確保してやらなければならないと、私は感じています。
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